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早稲田大学大学院長谷川教授のコラムにてご紹介頂きました(日経産業新聞「VB経営 A to Z」:掲載日2014年2月18日)

日本経済新聞
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革新的アイデアの獲得

事業「まず走る」は正解か

革新的でスケールの大きい事業アイデアを、どうしたら効率的に、そして確実に獲得できるか。 古今東西、この問いに多くのベンチャー企業や、大企業で新規事業を開発する人たちが挑戦してきた。

シンプルだが、それに応えるのは至難だ。最近では、「リーンスタートアップ」という言葉に代表されるように、 「あれこれ考えるよりも、さっさと始めてしまい、走りながら考えるべきだ」 「事業を開始する前にビジネスプランを作成するのは旧来のやり方だ」という乱暴な考え方も出てきている。

米国の「Yコンビネーター」や「500スタートアップス」などのインキュベーション組織も、 提供したオフィスに入居した企業に強烈な競争とスピードを強要しながら ビジネスアイデアを固めていくやり方である。

筆者も研究や分析、評論ばかりしていて実行しないのは問題だとは思うが、さりとて、 まず走り、つまづきながら考えるというにも効率が悪いと考える。 むしろ、顧客のニーズや、それに答える付加価値の提供の仕方について、仮説を素早く立案する。 それを小さく実行することで検証し、素早く修正するという回転を超高速で行うことが近道だと考える。

この考え方を実践しているのが「事業創造士」と名乗る松崎暢之氏である。 ヤマトホールディングス(HD)グループで、3000社を超える通販事業の立ち上げを支援した。 訪問した会社の課題を短時間で見極め、革新的な事業構造を提案できる事業創造のスペシャリストである。

彼はヤマトHDの流通網の価値を再定義することにより、過疎や高齢化による買い物困難者のための 「宅急便のエリア内当日配送スキーム」や、ウェブ上での引取回収指示サービスなどを続々と立ち上げた。 それらの事業はどれも顧客の高い評判を得て、利益的にも大きな貢献をもたらした。 現在は独立し、多くの会社を指導している。

彼に「どのようにすれば革新的でスケールの大きな事業アイエアを、効率的に、確実に獲得できるか」 と聞いたところ、その達人だったヤマト運輸の2代目社長、小倉昌男の考え方を基本にしているとの応えが返ってきた。

良い商品・サービスや革新的なアイデアを生み出すためには、顧客の声や社員の提案を直接聞き、 アドバイスしてもらう機会を多く持つことが秘訣だという。 それによって仮説を立て、それを素早く実践して修正する。その際、小倉氏は 「世のため、人のためになっているか」「オンリーワンか」「利益の先取りはしていない」 という3つの考え方を常に持って事業創造に当たっていたそうえある。

松崎氏はこれを実践するため、①サービスが先、利益が後 ②顧客の立場で徹底的に考えてみる ③5分で考えて即実行し、即修正する ④強みを徹底的に考える ⑤マーケティングミックスのバランスを考える ーーという5つを心がけているそうである。

最近の事業アイデアの獲得方法としては、発想法の分類やビジネスモデルデザインの分析手法、 ビジネストレンドの素早い獲得方法などが話題にのぼっている。

しかしスピードを重視するあまりに、そうした方法論に走るよりも、小倉氏の考え方のように、 社会に対してどのような付加価値を提供するべきかという原点に立ち返るべきだと強く考える。


早稲田大学大学院ビジネススクール教授
長谷川 博和氏
1984年野村総合研究所入社、自動車産業の証券アナリスト。ジャフコを経て、 96年に独立系のグローバルベンチャーキャピタルを設立し、社長(現会長)。 取締役、監査役などで多くのベンチャー企業の経営に参画。 2012年から現職。

※ この文章の著作権は、長谷川博和氏に帰属します。著作権保有者の許可のない転載は禁じられています。
※ この記事は日本経済新聞社の許諾を得て掲載しております。無断での複写・転載は禁じられています。

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